一緒にご飯を食べると

なぜか一気に親密度が高くなる気がする。
いかにも農家といった感じの家に営業にいったとき、
ものすごく奥手な感じのお母さんがでてきた。
なんとなく話もトロイ感じがして、
そのくせ頑なに最初から「買わない」の一点張りだった。
ボクは特にこういうお母さんが苦手だったけど、
このときは苦手を克服する練習のつもりでかなり食い下がった。
「1週間考えさせてくれる?」
といわれて、あ、これはダメだなと思った。
営業が本当に得意な人に言わせると買う人に考えさせちゃダメだそうだ。
たしかにそれは一理あると思う。
でもまあとりあえず待ってみるかと思い、
話の中で、近くのスーパーでパートをしていてその時間帯も聞き出していたので、
「おうちの電話だと、うるさいおばあちゃんがでるかもしれないし、
携帯持ってたら番号教えてくださいよ。仕事中にはかけないようにしますから」
といったらすんなり教えてくれた。
で、
1週間くらいして電話をかけたらお母さんがでてくれて、
「やっぱり、ダメかな」とかいわれたので、一時間くらい電話営業かけたら
「分かった、じゃあ明日の夕方来て」とOKをもらった。
かなりセオリーから外れていたけど、次の日にいって一人分の契約をもらった。
3人子供がいて、一番上の子はもう対象年齢から外れていて、
一番下の子だけが学力が心配なのでということだった。
で、このときはよく覚えているけど、お母さんを褒めるのもミスをした。
ピンク色のセーターだったので、
「似合ってますよ、可愛いですね、好みです」
とかいったら
「前に来たときも同じこと言ってたわよ」
と笑われた。まあミスだけどお世辞をいったつもりもなかった。
「契約したからひとつ頼みごとを聞いてくれる?」
と言われて何かと思ったら安いPCを探してほしいとのことだった。
そういうのはよく頼まれていたので、すぐ了解した。
PCはその日のうちに探してみつかったのでまたお母さんに電話をかけたら、
「私も実物を見てみたい」というので休みを聞いたら明日といわれた。
だから即、次の日に約束をした。
広くて目立たないホームセンターの駐車場で待ち合わせをして、
PCをみにいって、お母さんが買った。そのあと一緒にトンカツ屋でお昼ご飯を食べた。
食べている最中にいろいろ話をして、農家に嫁にきて苦労しっぱなしということだった。
なんかだんだんお母さんが話し言葉や顔つきや態度が変わってくるのがよく分かって、試しに、
「まん中のお子さんも一緒に契約したほうがいいですよ」
と押してみたら、あっさりと「うん、やっぱりそうだよね」となった。
で、兄弟だと割引がきくので前日の契約書に契約者を追加する形にしないといけなくなり、
お母さんに店で待っててもらって慌てて事務所に契約書を取りに帰った。
ボクは状況をはっきり説明しなかったけど、上司は見抜いてたらしく、
「そういうのは本当に得意だな」とホメてくれた。
「でも深みにはまるなよ」とも忠告してくれた。
ちゃらんぽらんでフランクで人に言えないこともいろいろやってる人だったけど、
本当に尊敬できる上司だった。
で、
お母さんのところへ戻って契約書を書き、一息ついたところで、
「もう少し、二人でお話しませんか?」
とさらに押してみたら、あっさりと「うん、いいよ」といわれて行った。
そしてイッた。
営業を始めたばかりの頃、
「たまにこっちが、いいのかな? と思っちゃうくらいとんとん話が進む人もいる」
と上司や先輩に教えてもらっていたけど、このときは本当だなあと思った。
あとボクなりに分析してみて、
やっぱり一緒にご飯を食べたのが相手の警戒心を完全に解いたんだと思う。
ところで、このお母さんはけっこう肉付きがよくて柔らかくて気持ちよかった。
でもくわえたことがないとかいうので、ボクが舐めまくって
お母さんがなんとなくとろんとしたところでくわえさせてみたら、自分から一所懸命してくれた。
とても優しい人だと思った。